これは個人のどうということのない選択が刺々しい世界を作ってしまうこともあるというお話です。

このかわいい形たちは、5割が三角形、5割が四角形で、10割の皆が形にちょっとしたこだわりを持っています。 でもほんのちょっとだけですよ。 本当のところは、どの形も多様性のある仲間が周りにいて欲しいと思っているのです。

あなたが動かせるのは、すぐそばのお隣さんが気に入らないために不幸せな顔をしている形だけです。 一旦お隣さんの問題がなくなれば、あなたはその形がお隣さんがが気に入らなくなって不幸せになるまで動かせません。 ここでは以下のごく単純なルールが一つだけあります。

「自分と同じ形をした仲間が、すぐそばのお隣さんのうち1/3未満しかいなくなった時には、自分もよそを探して引っ越しします。」


これって、どうってことはないですよね? どの多角形も程よく混ざり合ったご近所が良いと思っているのですから。 彼らの小さな偏見が多角形の社会全体に影響を及ぼすなんてことはないでしょうね。 いや、それとも...

不幸せな形を動かして、みんなが幸せになるようにしてみてください。
(適当な空いている場所に動かせば良いです。まずは余り深く考えないでください。)

おや、多角形社会はすっかり人種分離状態になってしまいました。うーむ、おかしい。

ところどころ、完全に四角形だけの地区ができてしまいました。 これはそこの四角形たちが悪いことをしたというわけではないのですが、三角形が皆近くからいなくなってしまったのです。 三角形のご近所でも四角形は大いに歓迎するはずなのですが、そこに来ようとする四角形はもはやいないのです。

以下のシミュレーションでは、不幸せな形は自分でランダムな空いている場所に引っ越していくようになっています。 また、どのくらいの人種分離状態にあるかをグラフに示しています。

このシミュレーションを何度か走らせてみてください。どうなりましたか?

なんだかおかしいですね。どれも素直な優しい形たちのはずなのです。 でも、それぞれの形がほんのちょっとだけ好みに偏りがあるために、多角形社会全体がくっきりと分離されるという結果になってしまいました。

個人の小さな偏見が集まると、社会全体として大きな偏りとなってしまうのです。

平等というのは不安定な平衡状態です。 限りなく小さな偏見でも、社会全体で分岐点を超えてしまうような影響を持つことがあるのです。 じゃあ、それぞれの形にまったく偏見を持たないよう教えてみたらどうでしょうか? (それとも、今日たまたま意地悪な気分なのであれば、もっと強い偏見を持つようにしてみましょうか?)

スライダーを使って個々の偏見の度合いを変えてみてください。

偏見の度合いを33% 以上にした時に、どれだけひどい人種分離状態になるかに気がつきましたか? もし50% だったらどうでしょう。それぞれの子にとってみても、近所で少数派になりたくない、というのは合理的なようにも思えますしね。

じゃあ皆の偏見の度合いをずっとゼロまで下げれば良いわけですよね? いや、残念でした。なぜって、実際の社会では完全にランダムに混ざり合った状態から毎日が始まるわけではないですから。 毎日、前日の状態から始まるわけです。

この世界は分離状態からはじまります。さて、偏見の度合いを小さくしたらどうなりますか?

なにが起こらなかったかに注目してください。 何も起こらず、混ざり合う方向に動くことなどはありませんでした。 もし社会に偏見が少しでもあるところから始まったとしたら、偏見をなくすだけでは十分ではないのです。 でも、もしそれぞれの形がほんのちょっとだけ多様性を持ちたいと思ったとしたらどうでしょう。

うわ、それぞれの子はまだ90% のお隣さんが同じ形であってほしいと思っているのに、皆よく混ざりあうという結果になりました。 もし偏見と多様性を求める傾向をそれぞれの子が持った時に、大規模な社会でどのような結果になるかを見てみましょう。

社会が人種分離状態から始まります。それぞれの子がほんのちょっとだけの多様性を求めた時に、何が起こるか見てみましょう。

どんな状態が許容できるのか、という考えをほんのちょっと変えるだけですっかり良くなったのです。 というわけで、みなさん三角形対四角形の戦いではない、ということをよく覚えておいてください。 これは、それぞれの人がどのような社会にしたいのかということを決めることができ、不満足な状態で我慢する必要がないということなのです。

全員を箱の中に入れてみましょう。 F R I E N D S H I P
(ヒント: 形を一気に箱の中に入れるのではなく、ペアを一緒に動かすようにしてください。)

最初は、自分の慣れたところから離れるのは淋しいことかもしれません。 でも、皆で力を合わせてちょっとずつ進めば、理想にたどり着けるのです。

最後に、自由に試せるようにしてみました。
終わりに

1. 個人のちょっとした偏見 → 社会全体としての大きな偏見。
ある人が、ある社会について「こだわりのある社会である」というのは、その社会の個々人が偏っているということを言っているわけではないのです。 個人攻撃をしているわけではありません。

2. 現在は過去につきまとわれています。
あなたの部屋の床が汚いのをきれいにするためには、食べ物かすを散らかすのをやめるだけではだめです。 平等な社会を作るというのはちゃんと掃除をするようなものです。それなりの労力がかかりますし、継続して行わなくてはなりません。

3. 近所に多様性を求めることからはじめよう。
もしほんの小さな偏見から、現在の困った状況が生まれているのであれば、ほんの小さな反・偏見を持つことによって修正できるかもしれません。 周りを見渡してみてください。あなたの友人、同僚、そしてあなたの参加している会議で。 もしみんなが三角形だったとしたら、素晴らしい四角形を持つ人生というものを逃しているのかもしれません。 それは皆にとって良くないことです。すぐそばのお隣さんだけでなく、その先の人々にも目を向けてみましょう。

このブログ記事で楽しんでくださってありがとうございます。

この人種隔離シミュレーションは、ノーベル賞を受賞したゲーム理論学者トーマス・シェリング、特に彼の1971年の論文に基づいています。 Dynamic Models of Segregation. 我々の作品はこの業績に依っており、ほんのちょっと多様性を求めるだけでも人種分離状態が解消できるのかを示しています。言い換えれば、我々は彼のモデルにハッピーエンドを付け加えたわけです。

シェリングのモデルは一般性を失ってはいないですが、もちろん実世界はもう少し複雑です。 実世界のデータに関しては、以下の論文に興味を持たれるかもしれません。 A Test of the Schelling Segregation Model.

組織的なバイアスに関する数学的モデルも多数あります。 Male-Female Differences: A Computer Simulation は、小さな性差別が、企業における昇進の階段を登るたびに積み重なっていくということを示しています。 The Petrie Multiplier は、テクノロジー産業においてなぜ性差別主義への攻撃が男性への攻撃ではないのかについて述べています。

今日の教訓™ は、ほんのちょっとの多様性を自分の周りの空間に求めていくだけで、社会全体における大きな影響を及ぼしうるということです。以下のページを見てみてください。 Plz Diversify Your Panel, これは、あるパネルに参加するよう招待された時に、本来の人種の割合からみて、特定のグループが過剰に招待されているようであれば、そのグループからの参加者は参加を辞退するべきである、という活動に関するページです。

この「遊べるページ」はBret Victorの Explorable Explanations と Ian Bogost の procedural rhetoric に啓発されています。


遊び読みしてくれた皆さん、ありがとう
Andrea, Astrid, Catherine, Chris, Emily, Glen, Jocelyn, Laura, Marc, Marko, Zak

以下でも紹介されています
WIRED, Washington Post, BoingBoing, Creative Commons, KillScreen, JayIsGames, Hacker News, MetaFilter, New York Magazine

翻訳
スペイン語, フランス語, ドイツ語

Remixes:
Polygons with Pentagons